特別講演

特別講演 1

第2日 9月18日(金)10:40-11:40 

宮田裕章先生

演者:
宮田 裕章 先生
(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授)

演題名:
Society5.0時代のヘルスケア

座長:
陣崎 雅弘(慶応義塾大学)

[抄録]
AIがもたらす技術革新に加え,ICTやIoT,ビッグデータなど一連のイノベーションの大波を踏まえた社会変革は医療も大きく変えてきている.新しい社会では企業や行政,学会などの壁を越えてデータを活用し,新しい価値を共創することが不可欠の要素である.この時,疾患を有した後の病院での治療情報だけでなく,在宅医療や介護というその後のフォロー,健康な段階からの検診に加えた様々なライフログデータなど,様々な時系列データを扱うことが可能となる.今後は疾患の診断・治療をICTやAIでサポートするだけでなく,より早期な段階からのエンパワーメントや治療後のサポートなどが重要となる.コロナショックにおいてもこうした技術は世界中で活用され,新しい社会における医療の役割が示されている.コロナショックの先にある社会の中で,どの様な医療が必要とされるのか?新しいヘルスケアはどのような未来につながっていくのか?現状と展望を概説する.

[略歴]
1978年生まれ 慶応義塾大学 医学部教授 2003年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了.同分野保健学博士(論文)
早稲田大学人間科学学術院助手,東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座助教を経て,2009年4月東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座 准教授,2014年4月同教授(2015 年 5 月より非常勤) ,2015年5月より慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授

【社会的活動】
2025日本万国博覧会テーマ事業プロデューサー
うめきた2期アドバイザー
厚生労働省 保健医療2035策定懇談会構成員,
厚生労働省 データヘルス改革推進本部アドバイザリーボードメンバー
新潟県 健康情報管理監
神奈川県 Value Co-Creation Officer
国際文化会館 理事
The Commons Project 評議員,日本代表

専門はデータサイエンス,科学方法論,Value Co-Creation

データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し,現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う.専門医制度と連携し5000病院が参加するNational Clinical Database,LINEと厚労省の新型コロナ全国調査など,医学領域以外も含む様々な実践に取り組むと同時に,経団連や世界経済フォーラムと連携して新しい社会ビジョンを描く.宮田が共創する社会ビジョンの1つは,いのちを響き合わせて多様な社会を創り,その世界を共に体験する中で一人ひとりが輝くという“共鳴する社会”である.

特別講演 2

第2日 9月18日(金)14:00-15:00 

根本建二先生

演者:
根本 建二 先生
(山形大学 理事・副学長/山形大学医学部東日本重粒子センター センター長)

演題名:
山形大学医学部における重粒子線治療プロジェクト

座長:
尾川 浩一(法政大学)

[抄録]
重粒子線治療は放射線治療の一種で,炭素の原子核をシンクロトロンで加速し,がんに照射します.X線が効きにくいがんにも有効で,副作用が少ない,短期間での治療が可能など,優れた特徴を持っています.一方で,巨大で高額な施設が必要で,世界では12施設(うち国内6施設)しかありません.山形大学医学部では,東芝と共同で超電導技術を用い小型化・高機能を実現する重粒子線治療装置の開発導入に取り組んできましたが,2021年3月より前立腺がん,同年9月からはいろいろながんの治療が開始されます.以前は先進医療として扱われ,患者さんは約300万円の自己負担が求められていましたが,近年,保険適用の範囲も広がり,また,民間の保険でカバーされることが増えてきたため,ごく一般的な治療になりつつあります.今後,小型で導入が容易な山形大学モデルが,グローバルスタンダードな装置として世界に普及することが期待されています.

[略歴]
1982年 東北大学医学部卒業.1988年 同大学大学院医学系研究科修了.宮城県立成人病センター,東北大学医学部付属病院助手,同大学大学院医学系研究科講師を経て,2003年 東北大学大学院医学系研究科助教授(放射線腫瘍学分野),2006年 山形大学医学部教授(放射線医学講座),2016年 同大学医学部付属病院 病院長,2020年より現職.医学博士.

特別講演 3

第3日 9月19日(土)10:40-11:40 

森島邦博先生

演者:
森島 邦博 先生
(名古屋大学大学院理学研究科 特任助教/JSTさきがけ研究者)

演題名:
宇宙線ピラミッドイメージング

座長:
森  健策(名古屋大学)

[抄録]
宇宙線イメージングは,大気上層部で発生する宇宙線中に含まれる素粒子“ミューオン”が持つ極めて高い透過力を利用して巨大な物体内部をX線レントゲン撮影のように可視化する新しい技術である.私は「原子核乾板」と呼ぶ銀塩写真フィルム型の3次元放射線飛跡検出器を用いた技術開発を行い,2015年,福島第一原発2号機内部の炉心溶融の可視化に初めて成功した.2017年には,4500年前にエジプトに建造されたクフ王ピラミッドの内部を宇宙線イメージングにより調査した結果,その中心部に未知の巨大な空間を発見した(K.Morishima et al., Nature, 2017).宇宙線イメージングの適用対象はこれらにとどまらず,社会インフラ構造物の老朽化検査や工業用プラントの内部診断,地質調査・資源探査などへの応用も期待される.講演では,ピラミッド内部の可視化研究を中心に技術と今後の展望について紹介する.

[略歴]
2002年 名古屋大学理学部物理学科卒.2004年名古屋大学大学院理学研究科博士課程修了.博士(理学).2010年より名古屋大学大学院理学研究科,素粒子宇宙起源研究機構現象解析研究センター研究員などを経て2014年4月名古屋大学高等研究院YLC特任助教.2019年4月より現職.2018年9月よりJSTさきがけ研究者(兼務).専門分野は素粒子宇宙物理学,放射線検出器開発など.
博士課程では,ニュートリノ振動実験のための原子核乾板技術の開発を行った.学位取得後は,原子核乾板技術の高度化と応用研究を進め,原子核乾板を用いた宇宙線イメージングにより2015年に福島第一原発で起きた炉心溶融の可視化に成功.2017年にはクフ王ピラミッドの内部に未知の巨大な空間を発見した.
2014年度応用物理学会放射線分科会放射線奨励賞,2015年度日本写真学会進歩賞,2017年度市村学術賞貢献賞,2018年度NEDO-TCP 最優秀賞,2019年度年度文部科学大臣表彰若手科学者賞,2019年度宇宙開発利用大賞文部科学大臣賞,などを受賞.