チュートリアル講演

第10回JAMITチュートリアル講演会(教育委員会企画)
「これから取り組む深層学習と研究の目標」
コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー連携企画

9月17日(木) 13:10-16:00

座長:
中田 典生(東京慈恵会医科大学),小田 昌宏(名古屋大学)

[概要]
深層学習を利用した研究が一般的になってきた.JAMIT大会でハンズオンを初めて行った2017年においては,Pubmedで検索される論文のうち,論文名にDeep learningを含む論文は338編であったが(企画中の2016年は116編),2019年には1777編になった.2020年7月現在ではすでに1500編あまりとなり,様々な問題を解決する手段として深層学習が活用される状況が反映されている.このような状況のもと,今回のJAMITチュートリアルにおいても,大会期間中に会場で開催される「コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー」と一部連携して,医用画像における深層学習の実際について集中的に講演を企画した.講演1では,これから深層学習の研究や勉強を改めて始めようとする学生や初学者に向けて,基礎的な内容を俯瞰し,様々な研究事例を紹介していただく.講演2では,その具体的な応用例として,COVID-19の診断に関してAI技術を応用した診断支援システムを開発した企業の開発者から,開発の経緯などを講演いただく.講演3では,医師が取り組むAI研究として,臨床的な着眼点を元にした需要の掘り起こしや研究計画,そしてその実際について講演いただく.

講演1:基礎編

演者:
李  鎔範(新潟大学大学院保健学研究科)
演題名:
ディープラーニングの基礎~これから取り組む方へ~

[抄録]
ディープラーニングモデルを構成する基本的な要素技術について概説するとともに,畳み込み,プーリング,事前学習などの用語について掻い摘んで解説する.また、ディープラーニングによってどのようなことができるのかに関連して,検出,領域分割,分類,推定,画質改善,画像生成などについて言及する.さらに,応用例として,医用画像分野におけるディープラーニングの研究事例をいくつか紹介る.最後に,ハンズオンセミナーの内容について簡単に紹介する.

講演2:企業における技術展開

演者:
周  暁妍(株式会社Infervision.Japan 代表取締役),
王  禕楠(株式会社Infervision.Japan プロダクトマネージャー)
演題名:
良い医療AIへの道

[抄録]
全てが始まる前に,自分に問いかけてみてください.医療業界は果たして,AIは必要なのか?医師の数が世界的に不足で,患者の数が増える一方である.更に,日本は少子高齢化などの問題を抱えている.少ない医師がより多くの患者の画像を扱うには,AIは良い選択に聞こえる.しかし,AIの力は限界がある.
良い医療AIの三つの要素:
1. 特定の現実の医療問題に対処する
2. 設計から製品化までの流れは,医療機器の品質管理プロセスを準拠に行わなければならない
3. 長期的な計画性と協調性が必要
当社の製品,仕事環境,開発経緯,医療製品の開発プロセス(データ,チームワーク,フィードバック,承認申請)についても概説する.

講演3:医師が取り組むAI研究

演者:
山田  哲(信州大学医学部画像医学教室)
演題名:
腹部画像診断・IVR診療におけるAIの潜在的臨床応用可能性

[抄録]
日々生み出され続ける膨大な情報と需要に対応しなくてはならない現代医療において,AIを用いた診療の質と効率の向上は大いに期待されている分野である.しかしながら真に役立つAIシステムを実現するためには,技術的な実現可能性の検討のみならず,臨床的な潜在的需要についての洞察が必要不可欠である.本講演では腹部放射線診断専門医およびIVR専門医として日常診療に携わる演者から見た,潜在的なAIの臨床応用可能性の高い放射線科診療領域について提案を行い,本領域へのAI応用推進の一助となれば幸いである.